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【栄養管理計画書の書き方】病院での記入例

栄養士のお仕事関連

【令和6年5月23日更新】『栄養状態の評価と課題』にGLIM基準の項目を追加

こんにちは、管理栄養士のななたです。
今回は栄養管理計画書の書き方をまとめました。

  • 栄養管理計画書の書き方が知りたい!
  • 病院での記入例が見たい!

というかたの参考になれば幸いです。

わたしは現在、病床数100床以下の急性期・回復期一般病院で勤務しています。

栄養士ひとり配置の栄養科に、病院業務は未経験で転職。
前任者からの引き継ぎも2週間ほどで、書類作成に苦労しました。

そんなわたしがつまづいたポイントなどを重点的に、「うちはこうしてるよ」という例を紹介しています。

※あくまでもほんの一例なので、諸々ご容赦ください。

目次から読みたい項目へどうぞ。

栄養管理計画書について

栄養管理計画書はいつ書く?判断基準は?

栄養管理計画書が必要である患者さんにのみ作成
入院後7日以内に作成

入院時にかならず作成する『入院診療計画書』の「特別な栄養管理の必要性」の項目が「有」の患者さんが主な対象です。

作成の判断基準は、病院によってさまざまです。
「栄養管理手順(プロセス)」として判断基準を決めておかなければなりません。

わたしは「無」の場合でも、入院中に栄養状態が低下した場合や特別食に変更になった場合など、必要になりしだい適宜作成しています。

だれが書く?

主に管理栄養士。
でも1人で書くものでもない

医師、看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など、医療従事者が共同して作成します。

誰がどこを記入するか、担当を決めている病院が多いかと思います。

ななた
ななた

わたしは退院時の評価を看護師さんにお願いしています。

作成後は原本か、原本の写しを診療録等に添付しなければなりません。

わたしの勤務先は紙カルテなので、原本をカルテにはさみ、コピーしたものを手元にファイリングしています。

栄養管理計画書のフォーマットは?

厚生労働省が発表している様式をもとに病院独自で作成しても良い。

栄養管理計画書を作成する他部署と相談して、あつかいやすい形を採用しましょう。

厚生労働省の様式(日本栄養士会のホームページより)に載っている項目は、もれなく記載しておく必要があります。

わたしはチェックボックスの項目を増やしたり、穴埋め形式にしたりと使い勝手のいいようにフォーマットを組んでいます。
書類作成の時間短縮にもつながります。

いちど作成したフォーマットで運用してみて、監査や診療報酬改訂などの機会に見なおし、使いやすいように変えていくといいですね。

”別の診療計画書”と併用する場合は、その計画書の項目ももれなく記載しておきます。
(『褥瘡対策に関する診療計画書』について、「栄養管理に関する事項」の「栄養管理計画書での対応」にチェックをいれて栄養管理計画書を使用する場合など)
参考リンク令和4年度診療報酬改定資料

※追記:
栄養士会より、令和6年度診療報酬改定にかかる様式例が公開されました!
(様式例等のダウンロードは会員限定)
参考リンク 令和6年度診療報酬改定にかかる各様式例と活用法解説動画

病院での記入例

栄養相談に関する事項や退院時の総合評価など、未定部分は空欄にしています。

画像は厚生労働省の様式(以下、”もとのフォーマット”とします。)をもとに改変しています。

『栄養状態の評価と課題』のGLIM基準の項目も追加しました。
スクリーニングツールはMNA-SFを使用している設定です。

GLIM基準については日本栄養治療学会のページがわかりやすかったです。
参考リンク GLIM基準 | 日本栄養治療学会 (jspen.or.jp)

項目ごとに記入する内容と例文を載せていきます。

基本情報

もとのフォーマットでは
名前、性別、生年月日、入院日、計画作成日、病棟、担当医師名、管理栄養士名が記載されています。

必要に応じて 

  • ID
  • NST依頼日
  • 計画開始日
  • 各担当者 

などを加えます。

入院時栄養状態に関するリスク

  • 主病名
  • 身長、体重、BMI
  • 身体状況
  • 食事摂取量
  • 検査数値
  • 日常生活自立度
  • 考えられる栄養リスク などを記入しています。

特別食を提供している場合は、特別食に応じた病名をかならず記入します。
検査項目と数値もあわせて記入。

病院によってあつかいやすい形にしましょう。

栄養状態の評価と課題

厚生労働省の様式よりhttps://www.pt-ot-st.net/pdf/2024/r6youshiki/001220549.pdf

前項の”入院時栄養状態に関するリスク”をもとに栄養状態の評価をして、課題を記入します。

【追記】厚生労働省の様式では『GLIM基準による評価』の項目が追加されています。

GLIM基準以外の評価として「過栄養」、「問題なし」、「その他」の記入もあるといいですね。

GLIM基準については日本栄養治療学会のページがわかりやすかったです。
参考リンク GLIM基準 | 日本栄養治療学会 (jspen.or.jp)

課題があれば、わたしは以下のような書き方をしています。

課題の例
  • 食思不振
  • Alb、Hb値低値
  • 嘔気・嘔吐あり
  • 食事摂取量減少傾向
  • 嚥下困難、脱水
  • 義歯があわず咀嚼困難、口腔内の状況改善
  • 体重減少の改善
  • 血糖コントロール改善
  • 褥瘡部の改善

目標

前項の”課題”をもとに、解決するための目標を記入します。

目標の
  • 栄養状態維持
  • 低栄養改善
  • 体重改善
  • 摂食・嚥下改善
  • 経口摂取への移行
  • 褥瘡発生防止
  • 喫食量増加
  • 血糖値コントロール改善・安定
  • 脱水改善

おおまかな目標だけでは、ちがう患者さんでも計画書は似たものになってしまいます。

具体的な数値をつかったり、対応方法や身体状況にあわせた書き方をするとわかりやすくなります。

長期目標と短期目標に分けて書いている病院もあるようです。

ななた
ななた

わたしの前任者は、監査で画一的な計画書と指摘されたそうなので、具体的に書くようにしています。(指摘事項の判断基準は各厚生局で異なる場合があります。)

具体的な目標の
  • 喫食量の増加→
    「食具と食形態の変更検討していき自己摂取できる量を増やす」
    「全介助により半量以上喫食できるようになる」

  • 体重減少の予防→
    「標準体重(〇kg)まで体重を増やす」
    「退院時まで現状〇kgを維持する」
    「1日のエネルギー量250Kcal増やし、1ヶ月で〇kg体重を増やす」

  • 長期目標:栄養状態改善傾向になるよう喫食量に合わせて補助食品を利用し、必要栄養量満たせるようになる
    短期目標:ラウンド時の声かけで治療の不安をやわらげ5割以上の普通食摂取

『SMART』の法則にそって設定すると、より具体的で明確なものになります。

具体的な目標をたてるための手法です。
以下の5つの基準にそって考えます。

  • Specific:具体的でわかりやすい
  • Measurable:測定可能である
  • Achievable:達成可能である
  • Relevant:関連性のある、重要な事柄
  • Time-bound:期間や期限が明確である

はじめに「いつまでにこの状態にする」と設定すると、逆算で短期目標や1日分の数値が設定しやすくなります。

すべての目標が数値化できるわけではありませんが、「退院時までに」「1ヶ月後に」など、期間だけでも設定しておくと評価もしやすいです。

手術の不安や入院によるストレスがある、などの様子は「その他栄養管理上解決すべき課題に関する事項」に書きますが、わたしは目標でも書いてしまっています。

特別食を提供している場合は疾病に対しての目標もかならず記入しています。

疾病に対しての目標
  • 血糖コントロール良好維持し在宅復帰する
  • 栄養指導により食事の適量が把握できるようになる
  • 慢性腎不全の進行防止
  • 水分のとろみづけによる誤飲の防止、脱水の改善

栄養補給に関する事項

もとのフォーマットでは

  • 栄養補給量(エネルギー、たんぱく質、水分)
  • 栄養補給方法(経口、経腸栄養、静脈栄養)
  • 嚥下調整食の必要性(なし、あり、学会分類コード)
  • 食事内容
  • 留意事項

が記載されています。

栄養補給量

病院によって、管理栄養士が必要栄養量を計算して記入したり、栄養指示量として医師が記入したりします。

実際に摂取できた量を別枠で記入している病院もあるようです。

エネルギー、たんぱく質、水分以外にも、病名に合わせて必要な項目を記入します。

  • 脂質異常症の脂質
  • 高血圧症の塩分
  • 鉄欠乏性貧血の など

栄養補給方法・嚥下調整食の必要性(なし、あり、学会分類コード)

栄養補給方法は、経口、経腸栄養、静脈栄養のうち該当するものにチェック。

嚥下調整食の必要性があり、水分のとろみ付けや軟菜食などの対応をしている場合は『2-1』や『3』など、対応する学会分類コード(正式名称:日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2021)も記入します。

参考食形態や学会コードについては栄養指導Naviのまとめが見やすいです。

食事内容

提供している食事内容を記入します。
食種や食形態の呼び名は病院によってさまざまです。

  • 食種
    普通食、糖尿病食、腎炎食など
  • 主食の種類
    米飯、全がゆ、3分がゆなど
  • 副食のきざみやとろみなどの形態
    粗きざみ、ソフト、ミキサーなど

経腸栄養剤栄養補助食品についての詳細を記載することもあります。

留意事項

個別対応していることや他職種に共有しておきたい情報を記入。

わたしは食物アレルギーの内容特別対応していることなどを、わりと自由に書いています。

経腸栄養の内容・投与速度や栄養補給量の設定の根拠を書く場合も。

  • 落花生アレルギーあり
  • 記載の栄養補給量はエネルギー300Kcal付加済。(主食の増量による。本人希望あり、主治医許可済。)

栄養食事相談に関する事項

もとのフォーマットでは、

  • 入院時栄養食事指導
  • 栄養食事相談
  • 退院時の指導

以上の3つについての必要性の有無、内容、実施予定日と備考が記載されています。

内容や予定日が未定の場合は『未定』と記入したり、決まり次第記入とするところが多いようです。

ななた
ななた

わたしは空欄にしておき、医師と相談して指示をうけて実施しています。

入院時栄養食事指導の必要性

入院時に、入院中の食事についての説明や食べ方の指導などが必要である場合に記入します。

内容の
  • 糖尿病食の内容と血糖値を上げにくい食事のしかたについて
  • 日頃の食事状況の確認と入院中の食事量について

栄養食事相談の必要性

入院中に栄養指導や相談が必要である場合に記入します。

わたしは食事摂取量や検査データを確認し、必要に応じて実施する場合が多いです。

内容の
  • 糖尿病の食事について
  • 栄養補助食品について

退院時の指導の必要性

退院する際に、退院後の食事などで指導が必要な場合に記入します。

入院中の栄養指導・食事状況・治療経過により、不要となる場合もあります。

内容の
  • 低血糖の防止について
  • 軟菜食の調理について
  • 在宅でのライフスタイルにあわせた食事について

その他栄養管理上解決すべき課題に関する事項(多職種との連携等)

食事内容や栄養面以外の課題を書きます。

  • 食事をする体勢や食事介助方法
  • 疾患に関すること
  • 生活習慣
  • 生活機能
  • 認知機能
  • 嗜好や食事でのこだわり
  • 服薬状況
  • 精神面、健康観
  • 口腔内の状況

などで課題がある場合に記入しています。

課題が多い場合は重要度の高いものを詳細とともに書き、あとは箇条書きのようにすることもあります。

多職種でそれぞれの分野の課題をくわしく記入してもらうのがベストなのかなと感じます。

内容の
  • 車イスでの食事だが移乗時に疼痛あり食事量落ちる。食体勢要検討。

  • 夜入眠できないことが多く日中傾眠傾向。食事中の覚醒状態要確認。

  • 下痢つづいているため本人食事拒否することあり。発言傾聴して服薬・食べ方・食事内容検討し、水分摂取うながし脱水に留意する。

  • 偏食・認知症あり食事量にムラあり。持ち込み食等食べられるものの摂取うながし褥瘡発生防止する。

  • 自炊は全くしたことがなく、これからもしないとのこと。血糖コントロールがうまくいくよう退院後の食事内容要相談。

  • インスリン療法による低血糖防止するため、食事摂取量や血糖値変動みていき、単位数など相談。

チェックボックスを利用しているところもあるようです。
項目は体重調整、必要栄養量の確保、嚥下機能訓練、経腸・静脈栄養の検討などが採用されています。

ななた
ななた

わたしの前任者は、監査で画一的な計画書と指摘されたそうなので、しっかり情報収集して具体的に書くことを意識しています。(指摘事項の判断基準は各厚生局で異なる場合があります。)

監査員いわく”患者さんの状況はひとりひとりちがうため、「課題なし」など計画書の内容が同じようにはならないはず”とのこと。

計画書作成時に課題が見つからない場合は、維持していくためにどうするのか、要観察の点や入院中気をつける点、今後の連携などを書くようにしています。

情報を他職種で共有する観点で記入すると、監査で「個別にしっかり書けていていいですね、これからもできる限りの個別対応を。」と評価されました。

内容の
  • 栄養状態・食事摂取良好のため、今後生活自立度にあわせた食事の体勢や栄養量みなおしていく。

  • 食事摂取に関する問題とくになし。経過観察し、必要に応じて食形態変更していく。

  • 課題とくにないが基本的にベッド上の生活のため、排便コントロールや活動量を確認し食事摂取量維持できるよう他スタッフと協力する。

栄養状態の再評価の時期 

もとのフォーマットでは実施予定日の日付を書き込むようになっています。

定期的に栄養状態を記録にのこし、再評価をする必要があります。
計画がうまくいってるか・目標が達成できそうかを評価して計画を見直します。

再評価の期限や日数は、国からの指定はありません。
病院での決まりや基準を決めておき、患者さんごとに臨機応変に時期を設定します。

たとえば、
検査の頻度や数値に反映される期間などを考慮して3週間
下痢などの消化管の課題を再評価する場合は1週間など。

わたしは1週間~最長4週間(1ヶ月)以内で再評価をしています。

ひとり勤務の場合、スケジュールの都合で予定日当日に再評価できない場合もあるため、期間が空きずぎないように気をつけています。

再評価時には何を書く?例文は?

計画を実行した経過を評価します。
体重や検査数値の変化、入院中の様子や新たに発生した課題などを記入します。

わたしは目標や栄養補給量などに変更点があれば根拠も書くようにしています。

内容の
  • 食思ないが補助食品の摂取良好で栄養必要量満たせている。

  • 褥瘡部サイズ小さくなりDESIGN-R11点→8点に改善。

  • 食事摂取量増加傾向みられ栄養状態良好維持。新たな課題もないため継続できるよう様子観察する。

  • リハビリによる活動量上がったためエネルギー、たんぱく質供給量変更。

  • 義歯による痛みあり現在使用なし。ソフト食に変更したが、食事量低下。○○(補助食品名)提供し次回血液検査数値確認する。

退院時及び終了時の総合的評価

退院時や計画終了時に、計画書の内容を実行した結果や、目標の達成度合いを評価して記入します。

栄養状態について改善・不変・悪化などのチェックボックス式にしているところもあります。

さいごに

以上、栄養管理計画書についてでした。
何かの参考になっていれば幸いです。

ただ空欄を埋める作業にならず、患者さんひとりひとりにあった計画を立てて栄養管理ができるようになりたいですね。
とはいえ、書類作成は効率よくこなして直接介入などに力を入れたいもの。
栄養管理計画書の書き方や事例は、書籍だけでなくインターネット上でも見ることができます。
病院のホームページに実際に使われている書式が載っていたり、栄養士会の事例報告や厚生労働省のモデル事例集などを見るのも参考になりますよ。

ななた
ななた

いっしょに頑張りましょう!

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